齋藤潤医師を筆頭著者とする「Benzaldehyde suppresses epithelial-mesenchymal plasticity and overcomes treatment resistance in cancer by targeting the interaction of 14-3-3ζ with H3S28ph」がBritish Jounal of Cancerに掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s41416-025-03006-4
論文の概要
この研究では、ベンズアルデヒド(BA)が癌細胞の上皮間葉可塑性(EMP)を抑制し、治療抵抗性を克服する効果を持つことが示されています。特に、14-3-3ζタンパク質とヒストンH3S28phの相互作用を標的とすることで、BAが治療効果を高める可能性があると述べています。
研究の背景
- ベンズアルデヒド(BA)は、アーモンドや杏に含まれる芳香族アルデヒドで、抗がん作用が示唆されています。
- 特に、癌細胞の転移や治療抵抗性を抑制する効果があるとされています。
- 14-3-3ζは、がん細胞で高発現しているタンパク質であり、がんの進行や治療抵抗性に関与していると考えられています。
主要な発見
1 BAの抗腫瘍効果
◦ BAは、オシメルチニブ耐性や放射線耐性のがん細胞に対しても増殖抑制効果を示しました。
◦ 特に、膵臓がんモデルや肺がんモデルにおいて効果が顕著でした。
2 メカニズム解析
◦ BAは、14-3-3ζとそのクライアントタンパク質(H3S28phなど)の結合を阻害し、ヒストンH3の脱リン酸化を誘導しました。
◦ これにより、癌細胞の上皮間葉遷移(EMT)を抑制し、幹細胞性や治療抵抗性を低減しました。
3 治療応用の可能性
◦ マウスモデルでは、BA誘導体(CDBA)が膵臓腫瘍の増殖および肺転移を抑制しました。
◦ CDBA投与群では、腫瘍量が減少し、転移巣も減少しました。
結論
• 14-3-3ζとH3S28phの相互作用が、がん細胞のEMPや治療抵抗性に重要な役割を果たしていることが示されました。
• ベンズアルデヒドを利用することで、これらの相互作用を抑制し、がんの治療抵抗性を克服できる可能性が示されました。
臨床応用への展望
• BAやその誘導体(CDBA)の抗がん効果をさらに検証することで、新たながん治療薬の開発が期待されます。