ベンズアルデヒド

ベンズアルデヒドとは?

  • モモやリンゴ、ウメ、プルーン、アーモンドなどの バラ科の果物に含まれる香り成分。
  •  安価な香料として用いられるほか、抗炎症作用、免疫力の向上などの効果が認められている。
  • ベンズアルデヒドには、大脳辺縁系を刺激して気分を落ち着けてくれると言われている。
  • この香りの作用を上手に利用したのが、「おばあちゃんの知恵袋」の一つ「頭痛い時は梅干しをこめかみに貼る」。

 

ベンズアルデヒドの研究

 

  • ベンズアルデヒドによる基礎研究〜理化学研究所〜
    • 人工的にがんを移植したネズミでは、約50%程度の効果を示した。 生まれつきがんになるネズミ族では、従来の抗がん剤はほとんど効果を示さなかったが、ベンズアルデヒドは約65%の効果を示した。60匹の犬で半年間にわたる毒性試験
    • 国立遺伝学研究所での細菌の変異などの実験

 

  • ヒトに対する臨床研究
    • 理化学研究所員の親族 直腸がん、1年9カ月で消失。 胃がん、腹膜転移、1年8カ月で消失。
    • 東大職員親族 肺がんで治療中に効果不良で治療。病状安定。

特徴

  • 顕著な抗腫瘍効果が認められる
  • 毒性はほとんどなく、長期連続投与が可能
  • 薬剤耐性が生じにくく、長期の有効性を保つ
  • 転移を起こしにくい
  • 痛みを軽減させる
  • 認知症予防の可能性

製剤形態

科研製薬(理化学研究所を株式会社に改組して発足された製薬会社)より医薬品化された

  • 内服薬・座薬 β‐Benzaldehyde β-cycrodextrin clathrate (CDBA)
  • 注射薬 4,6-O-Benzylidene-D-glucopyranose (BG) 揮発性の物質で構造が不安定なため難渋したが、1975年に誕生。

作用機序

  • 癌細胞において多量に発現されているシグナル伝達を補助する結合タンパクである14-3-3ζとclient蛋白との蛋白間結合を抑制することによって、腫瘍の生存、増殖シグナルを抑制する。
  • 脊髄後角に高発現した14-3-3ζが痛みの抑制に関与するGABAB1と結合す るために、GABAB1B2の2量体形成が抑制され、受容体機能が低下する。14-3-3ζを抑制することで、疼痛を抑える可能性がある。
  • タウタンパク質のリン酸化の維持に関わっている14-3-3ζ を抑制するこ とで、アルツハイマー型認知症などにおいても神経変性の部分に作用し、進行を抑制する可能性がある。

ベンズアルデヒド(経口、坐薬)の治療成績

  • 1980年1月、米国国立がん研究所の機関誌『キャンサー・トリート メント・リポーツ』に発表。
  • 手術不可能患者90例と重症がん患者12例の102例に10mg/kgのCDBAを投与。
  • CDBA投与のうち57例。CR 19例、PR 10例。
  • 舌がん4例は1.5から6カ月で著明に回復。
  • 鼻腔がん1例、肺がん1例は3カ月経過して著効。
  • 白血病の4歳の男児は4カ月で寛解。
  • 肉腫に対しては30mg/日、扁平上皮癌や腺癌に対しては300mg/日以 上が必要。

ベンズアルデヒド(注射薬)の治療成績

  • 1985年、過去10年間に治療を行った結果を米国国立がん研究所 の機関誌『キャンサー・トリートメント・リポーツ』に発表。
  • BGを720-1800mg/m2/日で65名の手術適応のない進行癌患者に投与した。
  • 55%の奏功を認め、7名にCR、29名にPR、24名が NC、5名がPDだった。
  • 副作用は認めなかった。
  • PD 5例 悪性リンパ腫、舌がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、大腸がん、 乳がん、子宮がん、膵臓がん

図1
1978(昭和53)年にはアルゼンチンで開催された国際癌学会において、 CDBA(β‐サイクロデキストリン‐ベンズアルデヒドの内服薬)を用いた臨床応用の結果、 副作用はなく有効性を認めたと発表しています。

なぜ世に出なかったのか?

 

  • 「副作用はなく、しかも広範囲のがんに有効」 抗がん剤は両刃の剣、副作用があって当然と考えれていた。
  • がん治療学会で慈恵医科大学の教授は、ヌードマウスにヒトの腎細胞がんを移植した後、BGの単独投与と放射線と併用したときの結 果をデータによって詳しく説明。BGを単独で投与したところ腫瘍の増殖が停止し、投与を中止した後も再増殖の傾向は見られなかっ た。また、放射線との併用でも腫瘍の縮小が見られ、腫瘍の抑制効果が認められたと同時に、延命効果も得られたと結論づけた。
  • 富山医科薬科大学の教授は日本細菌学会において、3年間にわたって行ったベンズアルデヒドの基礎研究を報告した。
    • 動物を使った実験で、ベンズアルデヒドががんに対して転移を抑える働きを持っている。
    • ヒトと動物では必ずしも同じではないものの、ベンズアルデヒドが免疫活性を高める。
  • 1981年(昭和56年)には全国12の大学病院で注射薬(BG) による動物実験および臨床試験が開始。
  • 各大学による臨床試験の結果を発表することとなり、記者会見を翌日に控えて突然、厚生省(現・厚生労働省)より何の説明 もなしに中止命令が出された。
  • 翌年(1985年)にはこれまで共に研究を続け、医薬品化を夢みていた同志ともいうべく科研製薬より、一方的に注射薬や内服薬、坐薬の製造が打ち切られた。
  • 2017年(平成29年)3月に、ある政党の公設秘書が、当時の国会議事録を調べて、ようやく事の真相が明らかとなった。
    • ある証券会社が「抗がん剤の特効薬が開発された。それには奇跡的な効果があり、世界的な発見である。間もなく国際癌学会でも発表される」と報じた。
    • 新聞や雑誌だけではなく、NHKでも放映されたため、科研製薬の株価が高騰。
    • 鎮静化を図るために記者会見を中止させたうえ、科研製薬に手を引かせたということが判明。
  • 一方、ノルウェーのペッターセン博士は1985年(昭和60年)に「ベンズアルデヒドのメカニズムは、ベンズアルデヒドががん細胞のタンパク合成を阻害することが効果の主な原因で、生体化学の基本物質ともいえるベンゼン核ががん細胞を攻撃すると考えられる」という実験結果を発表。
  • 1985年(昭和60年)、かねてより投稿していた東風博士の論文が、米国立がん研究所の機関誌『キャンサー・トリートメン ト・リポート』(5月号)に掲載されるも、製薬会社の協力は得られなかった。
  • 明治製菓が協力してくれることになる。
  • アルコルビン酸を加えたSBA(5,6-O-ベンジリデン-L-アスコルビン酸ナトリウム)の開発開始。カリフォルニア大学海洋研究所所長のアンドリュー・A・ベンソン氏のアドバイスによる。
  • 1991年SBAに関して米国で特許取得、翌年に日本でも特許取得。
  • 社長の交代とともに1991年に研究協力が終了。
  • 当時の癌学会会長の圧力があったとも言われる。

 

その後

 

  • 2005年、白鳥製薬の協力を得られる。
  • 2006年、齋藤潤医師が臨床に加わる。
  • 医師主導の臨床研究という形でCDBAの内服と坐薬で継続。GMP(good manufacturing practice)基準で製造。
  • BG、SBAは封印となる。
  • 作用機序はまだまだ不明。
  • 東風博士が脳梗塞で倒れる。
  • 作用機序を解明するためにベンチャー企業に依頼。
  • ベンズアルデヒドがmTORを有する経路に作用していることを発見。
  • しかし、なかなか進展がなく、ベンチャー企業の研究を打ち切る。
  • 2010年3月14日1時3分、東風睦之博士永眠される。 享年98歳

「世間はベンズアルデヒドの抗がん剤を認めようとしなかったけれど、私は多くのがん患者さんを治せたことを幸せに思っている」

これから

 

  • 2011年 齋藤潤医師は慶応大学医学部先端医科学研究所・遺伝子制御研究部門の研究員として基礎研究に携わる。
  • 癌細胞において高度に発現を示し、多機能にかかわる蛋白が作用部分であると推測し、癌化、増殖、転移、化学療法抵抗性、 放射線治療抵抗性との関連が指摘されている14-3-3ζ蛋白に着目。
  • 実験よりベンズアルデヒドがmTORなどと14-3-3ζ蛋白との結合を抑制することを確認。